天正九年
伊賀の国
来たか
明け方まで間がない
手短に話そう
信長が動いた
四万の大軍が
もうそこまで来ている
おそらく奴は
伊賀の血を根絶やしにするつもりであろう
勝ち目はない
だが我らは戦う
それが伊賀忍者の定め
忍びの道なのだ
だがおまえには
別の道を
歩んでもらおう
信長を討て！
今はまだ若く未熟だが
この百地丹波を越える
素質がおまえにはある
まずはこの伊賀を出て
抜け忍達の住む
隠れ里に向かえ
そこで里の長老に
教えを乞い
修行を積むのだ
そして、いつの日か
この指令を
果たしてくれ
これは上忍である
わしの命令
そして死んで行く
仲間の願いだ
さあ行け、そして歩め
おまえ自身の
忍びの道を
天下統一の野望を
果たさんとする信長は
天正九年、伊賀の国に
四万の大軍を送り
徹底的に焦土作戦を
実行した
これが世に言う
天正伊賀の乱である
凄腕の戦闘集団である
伊賀忍者は
信長には邪魔であり
脅威でもあったのだ
信長の大軍は神社仏閣を焼き払い
老人、女子供を問わず
撫で切りにした
この天正伊賀の乱で
事実上伊賀は壊滅した
だがここに新たな
伊賀忍者の伝説が始まる…
そうか…
伊賀の国に信長が…
だが我らは
争いを好まぬ
好まぬゆえ
おぬしと共には戦えぬ
忍びを捨て
伊賀の国をでたのも
平和な生活を望んだからなのじゃ
だが、わしとて
元伊賀忍者のはしくれ
伊賀が滅ぼされた
ということならば
黙ってもおれまい
おぬしに力を貸そう
さて、おぬしの事だが
百地が選ぶだけあって
素質は十分だが
まだまだ経験不足だ
術を身につけよ！
さすれば信長軍にも
対抗できるじゃろう
術は全国各地にある
修験場での修行により
得られるものと聞く
まずはこの村で
修行に耐えられる力を
身につけるがよい
修行の相手には
わしの孫娘のレイが
ちょうど良かろう
女だからといって
甘くみていると
ひどい目にあうぞ
それでは修行を始めよ
そして修行の日々が
過ぎていった…
